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【ひと・こと つながる環 vol.1】大町市で風穴の調査をする中村正樹さんに持続可能な社会について聞く

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 北アルプス地域で活躍する「人」にフォーカス。地域で事業や活動をしている人、ものづくりや場づくりをしている人を紹介する。    

 長野県大町市の任意団体「NPO地域づくり工房」で働く中村正樹さんに話を聞いた。


インタビューに答える中村さん


-中村さんは「NPO地域づくり工房」で働いていますが、きっかけは何だったのですか?

 僕は大学で海洋学を学んでいたのですが、以前から環境問題に関心がありました。学部の先生が「山は海の恋人」とよく言っていましたが、実際に山と海は密接につながっています。漂流ゴミといった海の問題も実は山で起きているのですね。

-山と海は離れた存在のようですが実はつながっているのですね。

 そうですね。かつては山で使った肥料や洗い物などの生活排水を川に捨てていたんです。それが赤潮の発生などの原因になっているので、海を守るにはまずは陸の環境問題からということです。解決していくためには小さいところから取り組みが大切なのですが、その活動を行政が管理するのはなかなか難しい。持続可能な社会をどう作るかというテ-マを研究するに当たり、地域住民が主体となって環境問題に取り組む団体を探しました。いろいろ調べて、たどり着いたのが「NPO地域づくり工房」でした。

 大学3年生の時に、インタ-ンシップで2カ月間お世話になりました。その時に得た経験と地元の人の温かさが印象的で、卒業後に代表の傘木さんにお願いして働かせてもらうことになりました。


 

-NPO地域づくり工房ではどんな活動をしていますか?

 NPO地域づくり工房は、大町市を拠点に持続可能な社会の実現に向けて地域づくりに取り組む住民主体の団体です。事業はいろいろありますが、僕が主に担当しているのは風穴の調査です。

 大町市にある鷹狩山の中腹に「冷風の丘」という風穴があり、毎月訪れて定点観測しています。

-どうして風穴の調査をしているのですか?

 風穴は冷たい風が一年中出ていて、標高の高い場所でしか見られない珍しい植物が生えています。氷河期から植生が変わっていないと考えられます。2018(平成30)年にミヤマハナゴケという地衣類が発見されたことをきっかけに、本格的な調査を始めました。

 ミヤマハナゴケは藻類と菌類の共生体で、互いに補完し合って生きている。これこそまさに持続可能性。標高2000メ-トル以上にしか分布しないのですが、標高940メ-トルのこの風穴の周りには繁茂している。これは氷河期の植物が、人の手が加わらなかったことで生き延びているということになります。地衣類についてはまだ知られていない部分も多く、温度や湿度などをデ-タ化しながら定期的に調査しています。毎年、風穴サミットを開いて調査結果などを報告しています。


 

-藻類と菌類との共存。持続可能性へのヒントがありそうですね。中村さんにとって大町市はどんなところですか?

 僕にとって大町は自分が好きなことがたくさん詰まっている場所。森や田んぼがあって、湖もある理想的な里山。それに仁科3湖がある。僕は中でも一番小さい中綱湖が大好きです。コンパクトに全てがそろっているのが魅力です。湖は海の環境と似ていて、世界の窓ともいわれますが、小さな湖から世界のいろいろなことが学べます。僕にとって湖は世界とつながれる場所ですね。

 風穴の調査とも通じるものがありますが、小さいことから地域を解決していく。持続可能な社会の実現のために小さなことにこそ目を向けていきたいですね。
 
-すてきなお話、ありがとうございました。


NPO地域づくり工房

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